30代に差し掛かり、これから初めての職種に転職したい場合、
- 今の職種に嫌気がさしてきて、転職したい。
- 30代で未経験の職種に転職が可能なのか不安。
- 今から未経験で転職しても遅くないのだろうか。
このような不安を抱くを抱くことも無理はありません。結論から申し上げて、30代から未経験の職種に転職することは可能です。
ただし、転職可能な業界や業種は限定されてしまいます。30代でも未経験職種への転職を成功させるためには、転職を成功させやすい業界や業種を知った上で応募する職種・業界を選定し、適切に面接で自身をアピールすることが重要です。
この記事では、元リクルートで人材に関する営業活動を行なってきた筆者が、数百人の採用担当者からヒアリングした30代の未経験者採用に関する採用担当者の本音に基づいて、以下の内容について解説します。
- 30代での未経験転職の実情
- 30代未経験でも転職しやすい業界
- 30代未経験でも転職しやすい業種
- 30代未経験から転職を成功させるポイント
この記事の目次
30代で未経験の職種に転職はできるのか
20代の間、特に第二新卒と呼ばれる期間は企業側も実績よりもポテンシャル重視の採用を行う傾向にあります。
企業側の視点において、20代のビジネスパーソンは人材の能力を判断するに十分な実績を培うことは困難であると考えられるからです。
しかし、30代の転職者の採用においては実績を重視して合否を決めることも少なくありません。
実際に30代から未経験業界への転職は可能なのでしょうか。
元リクルートの営業担当者で、実際に数千社に求める人材に関する本音をヒアリングしてきた情報をもとに実態をお教えします。
職種によっては可能
30代からでも未経験職種への転職は可能です。
雇用対策法の改定により、求人に記載されている情報では年齢や性別を求める人物像として記載することを禁止されているため、本当は年齢や性別を採用要件に含めていたとしても、求人内には記載されません。
雇用対策法が改正され、平成19年10月から、事業主は労働者の募集及び採用について、年齢に関わりなく均等な機会を与えなければならないこととされ、年齢制限の禁止が義務化されました。
引用元:「募集・採用における年齢制限禁止について」厚生労働省
そのため、求人に募集する年齢層や性別が記載されていない場合でも、「自分は採用されるはずだ。」と思い込まないようにしましょう。
求人に記載されていないのであれば、どのように30代でも未経験で採用される可能性があるかを確認すれば良いのでしょうか。
私のこれまでの採用担当者からのヒアリング経験では求人において、以下の4つの要素を満たしている場合は、30代でも転職できる可能性が高い傾向にあります。
- 人材不足の業界である
- 高い技術力を要さない職務である
- 社員数が少ない
- 成長途上の業界である
私のこれまでの経験上、上記4つの基準を満たす企業の求人においては、採用担当者が30代の未経験者への採用にも積極的である傾向にあります。
人材不足の業界
人材不足の業界では、人の入れ替わりが激しいことが多く、未経験者で30代以上でも採用して戦力にしたいという担当者が多いです。
当然、人の入れ替わりが激しい業界には、人が辞める理由が存在します。
人材不足の業界は、応募前に退職を検討されがちな理由を調べておきましょう。
退職する理由を知った上で、自身が耐え得るかを確認しておきましょう。
高い技術力を要さない職務
ITエンジニア、士業等の高い技術力や知識を要する職務の求人では経験者や有資格者を求める傾向にあります。
高い技術力を要する職務をこなせるレベルまで、未経験者を育てる人的コストを考慮すると30代の未経験者が採用される可能性が低いでしょう。
社員数が少ない
社員数が少なく、収益がある程度上がっている会社では人員不足のために、案件を十分に獲得できない状態にあるケースがあります。
例えば運送業界等はこの傾向が多分に当てはまります。
運送業界では、ドライバーの高齢化と人材不足により、配送案件を十分に受注できないことで売上が低迷していることが多いです。
成長途上の業界
成長途上の業界では事業拡大のために、人員が急遽必要となり、募集するケースがよくあります。
採用納期も短期間である場合が多いです。
もちろん職種にもよりますが、採用されるケースもあるでしょう。
30代未経験の求人数推移
引用元:「30代での転職を成功させるポイント~難しい?やっぱり遅い?~」エージェントBOX
上記のデータを確認すると、有効求人倍率が上昇傾向にあることが把握できます。
有効求人倍率が高いことは、求職者1人あたりの求人数が多いということを意味します。
未経験歓迎の求人に絞ったデータではありませんが、30代の転職市場は追い風の傾向にあることがわかります。
30代で未経験の職種へ転職する際の注意点
30代で未経験の職種へ転職する際には、ある程度考慮しておくべき注意点が存在します。
ここでは30代で未経験職種へ転職する際の注意点について解説します。
未経験で転職可能な職種は限定される
30代になると、実績や業務経験に基づいて採用の可否を判断することが多いため、未経験で転職可能な職種は限定されることに注意しましょう。
特に高い技術力や知識を要する職種や業界への未経験での転職は難しい傾向にあります。
例えばIT業界や弁護士等の士業、コンサルティング業界等への30代未経験での転職は難しいことが想定されます。
年収が減る可能性を考慮に入れる
未経験で転職する際には、年収が減る可能性があることを考慮に入れましょう。
以前の経験してきた業務での年収は、それまでの業務経験や実績を評価された結果です。
未経験業務では、関連する職務がある職種でもない限りは未経験としての年収からスタートして実績や業務経験を1から積み上げていくことになります。
関連業界や職種の方が転職しやすい
前職で在籍していた業界や職種に関連する求人に応募した方が転職しやすい傾向にあります。
業界が同じである方が、業界特有の事情や背景を理解していると判断されて、未経験職種であっても仕事に慣れやすいという印象を与えるケースも少なくありません。
また、前職に関連する職種である方が業務をスムーズに遂行しやすいと判断されて優位に働く場合があります。
例えば営業から営業事務へ転職する場合、営業事務は営業が業務を遂行しやすいようにサポートすることがメインの職務であるため、営業の流れを理解している方がスムーズに営業をサポートしやすいと判断されることが多いでしょう。
30代未経験でも転職可能な求人の探し方
30代で未経験職種へ転職する場合に、採用される可能性の高い求人を効率に見つけるための方法について解説します。
自分で求人を検索
自分で求人サイトやフリーペーパーの求人誌から、採用される可能性が高い求人を探すことも有効な手段の1つです。
ただし前述の通り、求人法により年齢や性別等を採用要件に入れることは禁じられているため、以下の要件を参考にした上で応募する求人を選ぶことをお勧めします。
- 人材不足の業界である
- 高い技術力を要さない職務である
- 社員数が少ない
- 成長途上の業界である
転職エージェントに相談
転職エージェントに相談することで、豊富な求人データベースからあなたが採用される可能性がある求人をピックアップして紹介してくれます。
求人データベースには企業の採用担当者からヒアリングした採用したい人物像に関する情報も登録されています。
転職エージェントの相談することで以下のようなメリットを享受することが出来ます。
- 自分で求人を探すよりも効率的に合格率の高い求人を探すことができる。
- 代理で求人への応募を行なってくれる。
- 企業への面接対策アドバイスをもらえる。
あなたの職務経歴書や履歴書に基づいて、ヒアリングした情報をもとに転職エージェントが合格可能性のある求人を紹介してくれるため、自分で求人を探すよりも効率的に転職活動を進めることができるでしょう。
さらに、提出した職務経歴書と履歴書をもとに、転職エージェントが代理で求人応募を行ってくれます。
ヒアリングした求める人物像や採用担当者の人柄等をもとに、面接のアドバイスを貰えることもあるでしょう。
自分自身の人脈を探る
自分自身の人脈を探ることも、1つの方法です。
しかし、この方法は個人の人脈の質と量に有効性が左右されるため、万人にはお勧めできません。
リファラル採用を取り入れている企業で勤務している知人がいて求人を出している場合は、その知人にコンタクトを取ってみることをお勧めします。
リファラル採用とは、社員からの人材の紹介や推薦による採用方法のことを指します。
社員からの紹介の場合、全く知らない人材を採用するよりもその人の人間性をよく知ることができ、採用後のアンマッチにより退職する可能性が低くなる傾向にあります。
近年広まりつつある採用手法です。
30代の未経験職種でも合格可能性がある業界
30代の未経験職種でも採用される可能性が低くない業界についてご紹介していきます。
飲食業界
飲食業界では、ホールスタッフ等のアルバイト以外にコンスタントに出勤可能でアルバイトの管理、売上管理等を任せられる正社員が不足する傾向にあります。アルバイトのみでは、人員がコンスタントに充足している体制を整えることは困難です。
売上管理や現場のマネジメント等の責任ある業務を任せられて、出勤日を固定可能な正社員を雇いたいと感じる飲食店経営者は少なくありません。
もし飲食店での接客業や調理、店舗運営に興味がある場合は、応募してみると良いでしょう。
人材業界
人材業界では、特に営業職が不足しがちな傾向にあります。
人材業界ではいかに求人数が充実しているかが売上に繋がるため、求人数を増やすのために営業組織を拡大することは重要です。
求人サイトでは、求人数が売り上げに直結します。
転職エージェント業においても、求人数を増やすことで求職者に紹介できる求人が増えて顧客満足度の上昇につながります。
また、自社の紹介した求人経由で転職が決まった場合に売上につながるため、求人の母数が多いことが売上に影響を及ぼす大切な要素なのです。
そのため、人材業界では営業職の人員強化を定期的に行っていることが多いです。
30代でも営業のポテンシャルがあれば採用される可能性があるので、積極的に応募してみましょう。
ブライダル、ホテル業界
ブライダル、ホテル業界は東京オリンピック開催に向けて、人員募集を積極的に進めていました。
しかし、コロナウィルス感染拡大の影響により、業務縮小傾向にあるため、2020年5月現在においては募集を取り止めている企業が多いようです。
販売、アミューズメント業界
販売、アミューズメント業界では接客スタッフであれば、未経験でも採用を行うケースが少なくありません。
接客スタッフから経験を積んで、最終的には店舗マネジメントを行うことができる立場を目指すことも良いでしょう。
30代未経験でも転職可能性が高い職種
30代で未経験の職種でも、比較的採用される可能性が高い職種についてご紹介します。
営業全般
営業職は、事業拡大のフェーズにいる企業であれば未経験でも採用されることも少なくありません。
面接や書類を通じて、採用担当者から営業に適性があると判断されれば、未経験でも採用されるケースを著者自身何度も目にしました。
ただし、営業活動自体が体力がいる業務のため、同じ未経験なら20代の応募者を採用される可能性は否めません。
不採用となった場合も一喜一憂せずに、縁がなかったと割り切って別の会社に応募しましょう。
ドライバー
運送業界では、人員不足により、案件が受注出来ないことが原因で売上低迷に陥っている企業も少なくありません。
また、以下の通り、ドライバーの平均年齢と比較すると30代は若手であることが確認できます。
「自動車運送事業等における労働力確保対策について」平成26年7月国道交通省自動車局
ドライバー職種の採用現場において、30代は若手に近いとみなされるため、未経験でも採用される可能性は高くなります。
事務全般
事務仕事は、具体的な作業内容を把握してミスなくこなすことができることが重要となります。
そのため、採用要件は他の職種と比較した際に低い傾向にあります。
ただし、実際のデータは守秘義務上掲載できませんが、事務職の求人倍率は非常に高いため競争率が高いことを心に留めて置きましょう。
接客業全般
接客業は、基本的にいかにお客様に満足していただける接客を行うことができるかが重要なポイントとなります。
そのため、面接時に接客の適性があると判断されれば、未経験でも採用されることが多々あります。
応募先の店舗のコンセプト等によって、求められる接客像は異なる点に注意して応募しましょう。
30代で未経験職種への転職成功のポイント
30代で未経験職種への転職を成功させるためにはどのような点を心がけるべきなのでしょうか。
ここでは30代での未経験職種への転職を成功させる際のポイントについて解説します。
資格を取得している方が有利
30代の採用では、ポテンシャルではなくこれまでの業務内容や実績を中心に採用の可否が決定されるケースが多いです。
取り組める業務を証明する材料の1つとして、資格の取得は有効です。
もちろん資格だけでは採用される可能性は高くないため、資格はあくまでも経験してきた業務内容を証明する1つの材料として考えておくと良いでしょう。
応募予定の職種の業務内容を調べ上げる
応募予定の職務の詳しい業務内容について徹底的に調べ上げましょう。
業務内容を深く知ることで、その業務に必要な能力や適正が自ずと把握できるようになります。
応募予定の職種に関する業務の深堀りによって、必要だと感じた能力と自身の経験で培ってきた能力の接点を見つけ出すことが自己PRを考える上で重要です。
自己PRを洗練させる
自己PRを洗練させることで、より企業に自身を採用する必要性を感じてもらいやすくなります。
自己PRを洗練させるには以下の流れに従うと良いでしょう。
- 自身の業務内容と実績を分けて、箇条書きで紙に書く。
- 特筆すべき実績を上げた背景を「現状」「問題」「解決方法」「結果」に整理して記入する。
- 60秒程度で実績を上げたエピソードを「結果」→「現状」→「問題」→「解決方法」の順で説明できるようにする。
さらに自己PRへの、採用担当者から追加質問があった場合に対策するためは、以下の内容について考えておくことをお勧めします。
- なぜ「現状」からその「問題」を解決しようと考えたのか。
- なぜ「問題」からその「解決方法」を選択することが妥当
上記の内容について考えることで、自身の価値観を採用担当者に伝えることが出来ます。
採用担当者に自身の人間性をアピールすることにも繋がるため、おすすめの方法です。
職務経歴を深堀する
職務経歴書において、特に転職した理由がよく聞かれるポイントです。
辞めた理由として、NGな回答例については以下の通りです。
- 上司や同僚への不満
- 業務内容への不満
- 給与への不満
基本的にネガティブな理由としては伝えないようにしましょう。
ネガティブな理由も捉え方次第でポジティブに伝えることが出来ます。
- 周囲と協調しながらチームワークを意識した仕事に取り組みたい。
- スキルアップのために学びの大きい仕事がしたい。
- 自身の能力を培って、正当な評価を得たい。
このようにネガティブに感じる内容でも、将来やりたいことにフォーカスを当てることでポジティブに転職理由を伝えることが出来ます。
各転職した転機毎の転職理由を考える際に参考にしてください。
志望理由を深堀する
志望理由を深堀することで、自身の価値観を把握することが出来ます。
志望理由を深堀して把握できた価値観と自身が仕事や私生活を通して得た価値観が一致している旨を伝えることが出来たらベストです。
志望理由を深堀するためには「なぜそう思ったの?」という疑問を何度も投げかけるようにしましょう。
まとめ
30代での未経験職種への転職は可能です。
ただし、業界や業種はどうしても限定されてしまいます。また、年収も下がる可能性があります。
しかし、いくら年収が良くても心から楽しいと思える仕事出ないと、精神的にも辛いですよね。
本当に自身が楽しいと感じることができる仕事への転職を成功させるために、この記事を読んでより効率的に未経験職種への転職を成功させましょう。