退職を決意した際の大きな関門は、どのように退職理由をトラブルにならないように伝えられるかどうかです。
- 退職したいけれど、上司に退職の決意を伝えることが不安で仕方がない
- 引き止めに合わずにきっぱりと退職できるか心配
- 退職時にトラブルに会いたくない
そんなあなたに退職時にトラブルにならないためのパターンごとの退職理由例文を用意しました。
他にも退職の際に注意すべき点や退職を認めてもらえない場合の対処法についても解説しております。
また、退職理由が決まったとしても退職時に注意すべきポイントを抑えた上で、慎重に行動する必要があります。
退職前の行動の選択を誤ると、思わぬ退職トラブルに繋がるケースも多いです。
適切な退職理由を考えて、退職時にトラブルにならないように退職日を迎えて、ストレスの原因である会社からスムーズに解放されましょう。
この記事の目次
上司とトラブルにならない退職理由の例文
仕事を辞める際に退職意思を伝えることはどうしても避けては通れない道です。
でも、仕事や人間関係等に不満があるからこそ「辞めたい」と感じているはずです。
エンジャパンのユーザーアンケートによると、「会社・上司からの引き止め」が退職のトラブルとなった要因で最も大きい結果となっています。
引用元:「『 エンウィメンズワーク 』ユーザーアンケート集計結果」エンジャパン
パワハラを受けている場合だと引き留められると、特に退職の意思を伝えることには勇気がいります。
上司をできるだけ刺激せずに、退職の意思を伝えるために予め退職理由を考えておくことをお勧めします。
ここではトラブルになりにくい退職理由と例文をご紹介します。
体調不良
退職時に利用しやすい理由の1つとして体調不良があります。
とは言え、体調不良と言っても多岐に渡ります。
実際に目に見えて症状が出る病気とそうでない病気があります。
精神的な病気の場合、気づかないうちに症状が進行していることが多いです。
仕事を辞めたいと感じる以外にも、無気力な状態や朝になると鬱っぽくなりやすい場合は、以下のチェックリストを確認しましょう。
引用元:「うつ病の症状チェックシート」うつ病こころとからだ
もし心当たりがある場合はメンタルクリニックを受診して、診断書を発行してもらうようにしましょう。
診断書は退職後の傷病手当を申請する際にも必要です。
傷病手当の申請には通常1年以上の被保険者期間が必要ですが、精神的な症状の場合は6ヶ月以上の被保険者期間があれば可能になります。
そのため、その後の傷病手当を受給するために無理に会社に残ることはせずに退職をすることを検討しましょう。
お忙しいところ、お時間をいただきありがとうございます。
最近何をするにも意欲が湧かず、念のため病院で診察を受けたところ、単極性うつ病の障害があるという診断が出ました。
医師によると、【症状の原因】が原因であるとのことでした。
医師から当面仕事を休むように指示が出ました。
誠に申し訳ございませんが、当面の間お休みを頂けますと幸いです。
よろしくお願いいたします。
退職の意思を伝えることも難しい場合は退職代行サービスを利用することをお勧めします。
一身上の理由
退職時に必ずしも退職理由を具体的に伝える義務はありません。
民法では以下のように定められています。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。
この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。民法627条1項
つまり、正社員の場合、民法上では退職は理由に関わらず自由に退職を申し入れることができるのです。
そのため、一身上の理由としても、具体的な退職理由を伝える義務はないため問題ありません。
この度、一身上の理由で退職させていただければと存じます。大変申し訳ありませんが、具体的な理由については控えさせていただきます。ここまで育てていただいた会社や皆様には大変感謝しております。
大変心苦しいのですが、何卒ご理解のほどよろしくお願いいたします。
結婚
結婚は自然な退職理由の1つでしょう。
しかし、職場での法令遵守の意識が低い場合、マリッジハラスメントが起きる場合もあるでしょう。
法律においても以下のように労働者の性別を理由とした言動なども禁止されています。
第六条 事業主は、次に掲げる事項について、労働者の性別を理由として、差別的取扱いをしてはならない。
一 労働者の配置(業務の配分及び権限の付与を含む。)、昇進、降格及び教育訓練
二 住宅資金の貸付けその他これに準ずる福利厚生の措置であつて厚生労働省令で定めるもの
三 労働者の職種及び雇用形態の変更
四 退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
もし心配な場合は、退職意思を伝える場で録音を行うようにしましょう。
この度、結婚をすることになりましてしばらく家庭環境を育むことに専念するため退職をさせて頂ければと存じます。
結婚をするにあたり、在職しつつ家庭を支えることも検討いたしましたが、今後生まれてくる子供のことを考えた際に退職をして家庭環境を育むことに注力したいという思いが強かったため、退職を決意した次第です。
親族の介護
親族の介護のために勤務を行うことができないことも退職理由として妥当です。
お忙しいところ、お時間をいただきありがとうございます。
この度、母親の持病が悪化し、介護が必要となりました。
長男である私が、介護のために地方に移り住み、介護をするため
誠に心苦しいのですが、退職させて頂ければと存じます。
何卒よろしくお願いいたします。
新たな業界や業務にチャレンジしたい
新たな業界や業務にチャレンジしたいこと自体、退職理由として前向きであるため、応援したくなる気持ちが起きる上司も少なくないでしょう。
お忙しいところ、お時間をいただきありがとうございます。以前から〇〇業界での仕事に強い興味をいただいておりました。
現在の業務にも非常に充実感を感じておりましたが、どうしても〇〇業界への夢を諦めきれずこの度退職の決意をいたしました。
これまで私を成長させてくれた〇〇さんや会社の皆様にはとても感謝しております。何卒ご理解頂けますと幸いです。
よろしくお願いいたします。
退職理由を伝える際の注意点
退職の意思表示をする際に伝える内容が決まったら、退職理由を伝える際に注意すべきポイントを押さえておきましょう。
真っ当な退職理由であったとしても、退職時の行動選択を1つ間違えただけで退職トラブルに発展しかねません。
以下に記載した注意点を守り、退職日まで退職トラブルを起こさないように心がけましょう。
会社への不平・不満を伝えることは控える
会社への不平・不満を伝えることは会社とのトラブルになりかねないので控えるようにしましょう。
もちろんこれまでの会社への不平や不満が溜まっていた結果、退職に踏み切ることは多いでしょう。
しかし、会社への不平や不満を口にしたところであなたにとってなにもプラスになる要素はありません。
さらに、人事への不満や業務への不満である場合は「改善するから会社に残ってほしい」と引き止めに会う可能性があります。
そのため、会社への不平や不満を言いたい気持ちは抑えることが賢明です。
伝える人間を間違えない
自身の上司に直接退職の意思を伝えることが一般的な退職方法です。
しかし、自身の直属の上司が日常的にハラスメントを行うような場合は例外です。
退職意思を伝えたところで、相手にされず、むしろ暴言を吐かれる場合も多いでしょう。
そのような場合は、直属以外の上司に退職意思を伝えるようにしましょう。
退職することをむやみに周囲に伝えない
退職することを無闇に周囲に伝えることは控えましょう。
周囲に退職することを伝えることで他の社員の士気にも影響を与えることになります。
周囲に退職することを伝えたことが原因で上司を敵に回すことに繋がり、パワハラを受ける場合もあります。
退職までは、出来るだけ社内では退職することを周囲に伝えないよう注意しましょう。
退職願の書き方を注意する
退職願は書き方に注意しましょう。
以下の退職願の例文(テンプレート)を参考にして記入してください。
コピーしてダミー部分を修正して、印刷して利用すると良いでしょう。
退職後どう生活するかを計画しておく
退職する際に、今すぐにでも退職したい気持ちが先走って、その後転職するまでの当面の生活にかかる費用の捻出方法を考えていないパターンがよくあります。
最低限以下の3つについては抑えておきましょう。
- 傷病手当や失業手当の給付条件を満たしているのかを確認する。
- 現在の生活レベルをどの程度引き下げる必要があるのかを知る。
- 傷病手当ての場合は受給中に就業はできないことを考慮に入れて計画する。
1ヶ月以上前に退職の意思を伝える
会社の就業規則によりますが、
「退職願は1ヶ月以上前に、直属の上司に提出する。」
とされている場合が多いです。
就業規則違反に対して、法的に罰則があるわけではありません。
しかし、場合によっては就業規則違反が懲戒解雇するための妥当な理由として判断される場合もあります。
リスクを犯さないためにも、就業規則を確認した上で適切な期間を退職希望日に設定しましょう。
退職が認められない場合の対処法
退職が認められない理由は多岐に渡ります。
中には「給与を支払わない」「損害賠償を請求する」といった金銭的被害を受けるケースも少なくありません。
解決方法が退職が認められない理由によって、様々です。
退職が認められないパターンごとの対処法を確認していきましょう。
代わりがいないので退職を認めない場合
あなた自身の職務を引き継ぎができるか人材が社内にいるかどうかは、会社都合の問題です。
あなたが責任を持って、いつ現れるか分からない引き継ぎができる人材を採用するまで会社に居続ける必要はないのです。
前述した通り、正社員は就業規則に則った上で自由に退職する権利を持ちます。
あなたが退職意思を伝えたことを証拠として残すために内容証明郵便で退職願を送付しましょう。
退職日までの給与を支払わないと言われた場合
退職日までの給与を支払わないことは労働基準法違反になります。
労働基準法では以下のように定められています。
(賃金の支払) 第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
もし本当に給与未払いとなった場合は、給与の未払い分の金額を証明する証拠を集めて給与未払い分の請求について弁護士にすることをお勧めします。
離職票が発行されない場合
会社が離職票をなかなか発行しようとしない場合、転職活動や各給付金の申請ができず非常に困ってしまいます。
その際は、ハローワークに相談して「確認の請求」を行ってもらいましょう。
雇用保険法では以下のように労働者が被保険者で無くなったことの確認を届け出によって行うことができます。
第八条 被保険者又は被保険者であつた者は、いつでも、次条の規定による確認を請求することができる。
(確認)
第九条 厚生労働大臣は、第七条の規定による届出若しくは前条の規定による請求により、又は職権で、労働者が被保険者となつたこと又は被保険者でなくなつたことの確認を行うものとする。
被保険者で無くなったことが確認されたらハローワークが離職票の発行を行ってくれます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
直属の上司に適切な退職理由を伝えて、細心の注意を払った上で退職日まで慎重に行動することが退職トラブル防止のためには重要です。
万が一、退職時にトラブルにあったとしても解決方法はあります。
この記事を参考にして、円満退職して人生の新たなステップへと踏み出しましょう。